先場所優勝した豊昇龍が大関に昇進し、照ノ富士が初日から休場する中で迎えた秋場所だったが、正直に言っていまの大相撲の悪いところが出た場所となってしまったように思う。自分としては昨年初場所以来の東京場所の中継観戦15日間皆勤となったが、また今場所も主観と偏見に塗れて振り返っていく。
今場所を振り返る
三大関
大相撲秋場所は先場所を全休し角番で迎えた大関貴景勝が今年初場所以来4度目の優勝を決めた。初日こそ黒星発進で中盤に連敗はあったものの、それでも二桁の白星を挙げたという点に於いては大関として最低限の責務は果たしたと思う。
ただ優勝争いは終始下位の力士を追いかける展開となり11勝での優勝となった事は、より大関として高いレベルを求めるとなると物足りなく感じてしまう。優勝を懸けた決定戦の一番も立合い変化という内容となり、熱戦を期待した観客好角家の思いに反する事になってしまった事も、最低限の責務は果たしてもどこか大関として物足りないと感じてしまうところである。
審判部長を務める佐渡ヶ嶽親方は来場所が綱取りの場所と明言はしなかったものの、今場所以上の成績で連覇をすれば綱取りへの道も見えてくると思う。過去2度の綱取り挑戦はは途中休場で逃しているが、まずは何事も無く来場所15日間皆勤して欲しいと願うところである。
他2大関は大関の責務を果たしたとは言えない結果となった。先場所4日目から出場に踏み切るも負け越して角番で迎えた霧島は勝ち越しこそしたものの9勝止まり、未だ怪我の影響もあるのかもしれないが、もう1勝して二桁に乗せて欲しかったという想いはある。新大関で迎えた豊昇龍は固くなってしまったのか千秋楽になって勝ち越しを決めるという、先場所優勝した勢いはどうしたものかと感じる結果となってしまった。優勝争いにも絡めずとても大関の責務を果たしたとは言えない霧島と豊昇龍だが、来場所こそ責務を果たせるようより精進邁進奮起して貰いたいものである。
その他幕内
今場所優勝争いを終始引っ張ったのは昨年九州場所以来の返り入幕となった熱海富士であった。終盤は上位力士と組まれて跳ね返される結果となったが、それでも上位力士の不甲斐無さが続く中で若手の存在感を発揮したのではと思う。場所前に21歳になったばかりの若武者であるが、その分この活躍ぶりはここ最近ゴミクソな状況が続く大相撲の中でも期待したくなる力士である。
髙安は今場所も優勝に届かなかった、共に1敗で迎えた10日目熱海富士との取組を落として腰を痛めたのか終盤は思うようにとれなさそうであり、千秋楽まで優勝の可能性は残したものの霧島との取組を落として決定戦には進めなかった。髙安の優勝は多くの好角家が切望する悲願であり、それは本人も同様であると思う。残りどれだけ土俵にあがり続けられるかは分かるものでは無いが、何度も届かない分より是が非でも優勝をして欲しいと願いたくなる。
翠富士は勝った十番のうち六番を肩透かしを決めて制した。二桁にも星を乗せて技能賞を獲っても良かったのではと思うところであるが、三賞全体を見ても大盤振る舞いだった先場所から今場所は敢闘賞の熱海富士ひとりだけという寂しい結果になった。優勝ラインが11勝で先行も厳しくなったのかもしれないが、今場所の翠富士を見ていると余りに渋過ぎないかと余計感じてしまう。
各段優勝・三賞
幕内 | 西大関 | 貴景勝 貴信 | 兵庫県 | 常盤山部屋 | 4場所ぶり4回目 |
十両 | 西7枚目 | 一山本 大生 | 北海道 | 放駒部屋 | |
幕下 | 西3枚目 | 日翔志 忠勝 | 東京都 | 追手風部屋 | |
三段目 | 西2枚目 | 北磻磨 聖也 | 兵庫県 | 山響部屋 | |
序二段 | 東14枚目 | 安大翔 大和 | 宮城県 | 安治川部屋 | |
序ノ口 | 東18枚目 | 城間 瑠正 | 沖縄県 | 尾上部屋 |
殊勲賞は大栄翔、髙安、北青鵬、熱海富士それぞれが優勝の条件付きで受賞の可能性があったが、熱海富士は13日目の本割で貴景勝戦を制しているので無条件でも良かったのではという気がする。あとは先述したように翠富士が技能賞でもと思うところである。
場所後の動き
秋場所後に開催された理事会に於いて41代式守伊之助が来年初場所から38代木村庄之助に昇進する事となった。これで37代の定年退職以降約9年続いた庄之助の空位が解消され、定年を迎える来年秋場所まで38代庄之助を務める事になる。
行司の最高位である立行司、その東方にあたる木村庄之助への昇進が決まったものの、41代伊之助は差し違いが多い事が懸念材料とされ、9日目の琴ノ若と豊昇龍の取組でも物言いがついて協議の結果差し違いとなった。自分も差し違いの多さや土俵上での所作に不安を感じるところがあるが、来年初場所から秋場所までの5場所、いま以上に気を引き締めて木村庄之助の名を汚さぬ土俵裁きをして貰いたいと願うところである。
同じく理事会で三役格呼出の次郎が立呼出へ昇進する事が決まった。不祥事による退職で空位になっていた立行司だったが約4年で解消、副呼出を飛び越し二階級昇進となった。
また新弟子検査の体格基準を事実上撤廃する事が決まり、付出し制度も改訂される事になった。付出し制度は現在主要アマチュア大会の横綱になった人に幕下10枚目格及び15枚目格の資格を与えていたが、これを8強以上に幕下60枚目格を与え、16強以上と全国高校選手権及び国体少年の部の4強以上に三段目90枚目格を与える事となった。
いずれも新弟子不足の打開を図る策ではあるが、これによってこれまで基準に満たなかった小兵の力士が増えて持っている素質を伸ばしけば良いなと思うところである。付出しは制度改定によって伯桜鵬の所要1場所での十両昇進や3場所での新入幕という最速記録の更新はできなくなるが、より学生アマチュア力士への門戸を開いて取り込んでいきたいというところなのだろう。
新弟子不足の解消は長年の問題であるが、この門戸開放でより多くの人が入門して尚且つ角界を盛り上げられるだけの力をつけていければ、そうなる事を願いたいところである。
終わりに
優勝ラインが11勝で3大関のうちふたりが二桁に届かず、下位力士の躍進は決して悪い事では無いがこうも毎場所のように割が崩れてしまうと番付が意味をなさなくなっていく。秋場所はここ最近続く上位力士がその責務を十分に全うできないゴミクソ状態となってしまったように思う、それでも貴景勝が決定戦の末に優勝した分そこまでゴミクソとはならなかったようにも思うが。
やはりいまの大相撲に必要なのは圧倒的な強者、全盛期の白鵬とまでは言わないまでも常に優勝争いを繰り広げて優勝回数を重ねていく、そんな強い力士を自分は切望している。これ以上下位力士の躍進が頻繁に発生して番付という実力社会が崩れかねない事態を起こしてなどいけない、強者がその地位に見合った強さを発揮し責務を全うする、そんな力士が必要である。そんな逸材がこの先出てくるのかは分からないが、こんな事態をこれ以上続いてはいけない。それが解消されるまでは、全面的にいまの大相撲を好きになる事も期待する事も難しそうである。
て事で今回はここまで、次も期待しないでください。